赤ちゃんは産まれるとき誰でも両手を握りしめて生まれてきます。あれは何を握りしめてきたのかと言うお話です。
実は、人は生まれてくるとき右手に「元気」を、左手には「勇気」を握りしめて生まれてくるのだと僕は信じています。
この二つには共通の、奇妙で不思議な性質があります。
「元気と勇気」は使わなければ使わない分ドンドン減ってゆきます。逆に「元気と勇気」は使えば使うほどドンドン増えてゆくのです。
さてこの話、ボランティア活動をする人には「成る程」と、頷いていただけるでしょう。
まさにあなたの活動はこの2つの力をドンドン増やす為の素晴らしい方法だからです。そしてこの力は必ずいつか育って自分を助けてくれます。それだけは本当に確かなのです。
あなたの活動を尊敬し、讃えます。
あなたの「志」を共に護り共に育ってゆきたいと思う私たちの心こそが、この高校生ボランティア・アワードです。
さあ、今年も元気と勇気を育てる旅に出ましょう。
はじめに
開会式 & 発表大会 & 交流会
「高校生ボランティア・アワード2023」が、2023年8月9日・10日の2日間、昨年と同じ新宿住友ビル三角広場にて華やかに開催されました。135団体が6月〜7月にかけてオンラインで行われた活動発表交流会を経て、88団体がブース発表団体として選ばれ、直前に1団体欠席の連絡があったため最終的に87団体が全国から集まりました。
新型コロナウイルスが感染症法上5類に移行したことで、様々な制約が減り、高校生たちの表情が昨年より明るかった気がします。ブースの数は昨年より10ブースほど減らしましたが、一校あたりの参加人数に制約を設けませんでしたから参加人数はむしろ多かったくらいですし、受付のあとの記念写真も大会委員長のさだまさしと司会進行の川島葵アナウンサーが一緒に撮影することができました。
撮影が終わった団体からブースの飾り付けや準備に取り掛かりましたが、この日は「長崎原爆忌」でしたので、11時2分に参加者全員で1分弱、長崎に向かって黙祷を捧げました。その後、川島葵さんの司会によりステージで開会式が行われました。
大会委員長のさだまさしは、「今年もこんなに多くの高校生たちが集まってくれてとても幸せです。誰かの為に頑張っている高校生がこれほどいてくれるのは、とっても素敵だと思います。みんなで手を繋いだらもっと大きなことが出来るんではないか、という気がしています。この思いを集めていったら日本が変わるんじゃないかと期待しています」と高校生たちへメッセージを送りました。
今年は「私たちが創る未来」というテーマで大会ロゴマークを募集し、過去最多の応募総数441点の中から、埼玉県立芸術総合高等学校の湯澤空美(ゆざわ くみ)さんが最優秀作品に選ばれました。 湯澤さんが「みんなで力を合わせて未来を創っていこうという想いを込めました」と思いを話すと、大会委員長さだまさしは「みんな違っていろんな子がいるのがいいね。任せておけば大丈夫という安心感がある」と語りました。
ご支援いただいた企業や団体を紹介したあと、 参加校を代表して、初芝立命館高等学校インターアクトクラブの元山慶祐(もとやま けいすけ)さんから素晴らしい開会宣言をいただきました。
「宣誓! 僕たち、高校生は、変わりゆく世界の中で、誰かのために動き続けている仲間がここに集まり、新たな未来を作るための貴重な時間を過ごします。ボランティア活動をしてる中でたくさんの壁がそれぞれあったと思います。どうせ高校生だから。単なるボランティアだから。結局何も変わらないのではないか。これは僕が活動をしている中で言われた言葉です。でも僕は思います。ボランティア活動には、挑戦するという自らの意思に意味があるということ。ここにいる日本中からきた仲間たちは、やってみよう!という挑戦の心があってそれぞれ活動を始めたと思います。高校生の短い時間の中で同じボランティアという道を歩む仲間たちと2日間、1秒も余すことなく全国の仲間たちと繋がり、これからの未来をよりよくするために全力で励むことを誓います。
2023年8月9日 初芝立命館高等学校インターアクトクラブ 元山 慶祐」
1日目のブース発表は、参加した高校生だけによる発表で一般の来場者はいませんでした。昨年、コロナ対策で一般来場者を一切お断りした結果、高校生同士の交流が大変深まったという思わぬ収穫があり、今年も1日めはそれに倣った形。
発表ブースは様々な創意工夫を凝らし活動写真や図面、模型などを展示、衣装や被り物を身に着けて活動をアピールするなど、活気に満ちていました。また、お互いがお互いのブースを訪問しながら交流を深めている様子が各所で見られました。
13時から始まったブース発表大会は16時45分に終了。最後に、参加高校生たちの交流会を開きました。
オープニングアクトとして、青森県立柏木農業高等学校・柏農ねぷた委員会絵師三銃士の皆さんによるお囃子がねぷた祭の映像と共に披露されました。
ブース発表とは違うフェーズでお互いをよく知る機会を作り、場合によっては今後、一緒に活動していくような方向に発展することを期待して事務局が用意した時間でしたが、想像していた以上に活発に話し合っている姿を見ているだけで、嬉しくなってしまいました。この時間こそが、他の大会にはない「高校生ボランティア・アワード」の真骨頂だと思います。
この日の締めは白石踊800年の伝統を受け継ぐ会の皆さんによる白石踊の披露。参加した高校生一同で一緒に踊って一体感を深めました。
発表大会 & シンポジウム & 閉会式
2日目からは一般の来場者に向けての活動発表でした。クラウドファンディングでこの大会にご寄付(1万円以上)をくださった方々、風に立つライオン基金の会員として支援してくださっている「風の団」の方々、学校関係者の方々、協賛各社また来年以降に協賛を考えてくださっている企業の方々など、多くの方が高校生の活動に興味を持って、また高校生たちにエールを送りたいとご来場くださいました。
また、応援団のテツandトモのお二人、新羅慎二さん、ももいろクローバーZの高城れにさんもほとんどのブースを熱心に見てくださいました。
こうしたプレゼンもボランティアに必要なコミュニケーション能力を高めるために大切な経験になったことと思います。
午後からは参加高校生全員が参加するシンポジウムが開催されました。
国境なき医師団アドミニストレーター・森川光世さん、新潟災害ボランティアネットワーク理事長・李仁鉄(り じんてつ)さん、スポーツキャスターで当基金評議委員・古田敦也さん、一般社団法人BOSAI Edulab代表理事・上田啓瑚(かみだ けいご)さん、震災語り部・菊池のどかさんの5人のパネリストを迎え熱の籠もった議論が交わされました。
冒頭、今回のテーマ「私たちが創る未来」についてパネリストのご意見を伺う中で、高校生からも積極的に発言があり、年々この大会の目指す目標に近づいているのが伝わってきました。
「僕は君たちくらいの時に「面白い人生を歩みたい」と考えていました。その中で『1%だけは誰かのためになるようなこと』をしたいと考えるようになっていった。そう考えた時に『私たち』の『たち』の部分で『1%誰かのために』とスクラムが組めるようになれば、『私たちの未来』を語れるようになるんじゃないかと思います」(鎌田實先生)
「活動をしていく中で必ずしも思い通りにいかないことがあると思います。一人でできることは限られているのでチームワークが大切。昨年の秋、ウクライナで活動しました。夜になると砲撃音が聞こえるような所で、家が振動するような所でしたが、いつ停電が起きるかわからないような中でも、どんなに思い通りにならない中でも、少しずつでも全員で前に進もうという姿勢や団結力が将来に繋がると思います」(森川光世さん)
「一年中ずっと災害支援をやっていると、自分がヒーローになった錯覚に陥ることがあります。自分に自信を持つためには必要なことだけれど、行き過自分と違うやり方の人が自分の邪魔をする敵に見えてしまう。そうするとチームワークはガタガタになる。だから自分は一人の人間なんだということを忘れないことが大切です。それから被災者と向き合う時に、つい目に見える泥だらけの家を片付けようと思うあまり、その脇で不安そうに佇んでいるおじいちゃんおばあちゃんの姿が見えなくなっちゃうことがある。『ドロを見ずに人を見よう』っていう言葉があります。泥の先に人がいるんだということを大事にしています」(李仁鉄さん)
「高校生の頃、プロ野球選手になるとは正直思っていなかった。未来は何が起こるかわからない。皆さんが今想像している10年後、20年後は多分間違っています。自分の感情もおそらく変わります。だからこそ、自分で未来を創るんだという気持ちは大切だし、いろんな局面でへこたれない、諦めないという志も是非忘れずに持っていてください。今日、いろいろな経験をした大人たちがいろんなことを言いますが、それもはっきり言って正解じゃないです。今の時代は情報過多だから迷う。人は間違うし、失敗もするけれども、そのあとの立ち上がり方が大事。一番大切なのは目標を整えること。欲を整えるなんていう言い方もしますが、何がしたいかということをきちんと自分自身で理解することが大切です」(古田敦也さん)
「今、何が正解かは正直わかりません。でも、まずは目の前のことに一所懸命取り組むということが、あとから振り返れば意味のあることだったんだ、とわかると思います。防災については、まずは自分の命を守るということ。そのために自分の家は大丈夫か、地域は大丈夫かというふうに周りの人と話し合うことが大切です。今はライオン・ユースの一員として『47分の1プロジェクト』をサポートさせていただけたらと思っています。みんなで取り組めば日本が変わっていくと思います」(上田啓瑚さん)
「語ることが仕事ではありますが、いろいろな人のお話を聞くことも大切にしています。亡くなった人に寄り添うことも大切ですが、今生きている人に寄り添って話をすることが大事です。自分に起きた事実を正確に伝えること、知っていただくことプラス、自分だったらどうするか考えてもらう機会になればと思っています。高校時代のボクシング部のコーチが教えてくれた『強くなりたかったら人を大切にしろ』という言葉があって、語り部としても『人を大切にする』ということをいつも思っています」(菊池のどか)
シンポジウムの後、最後に特別賞の表彰式と閉会式が行われました。今回一つ残念だったのは、台風6号の影響により大分県立大分工業高等学校の皆さんが大幅に遅れてしまったこと。しかし、ポスターとオンライン交流会のプレゼン映像により、「Dream World Healthcare Programme賞」を受賞され、最終的に表彰式の途中で駆け込んで来て特許を取ったばかりの水車を利用した発電機を紹介していただくことができ、短い時間でしたが喜びの声も聞くことができました。
そして最後の最後に、アンコールとしてゲスト応援団のパフォーマンスが賑やかに行われ、最高の二日間が幕を閉じました。
「『これをやったことで誰かが喜んでくれるかな?』という気持ちは、僕らの心にとって大切なことだと思います。これから社会に出ていったときにボランティアから離れてしまう人もいるかも知れないけれど、心のどこかにそんな思いを持ち続けていって欲しいと思います。そして、この国の20年後、30年後をいい意味で変えていって欲しいと思います」(さだまさし)